Marshallスピーカーで聴きたい音楽 -第1回目はThe Who(ザ・フー)。
よくMarshall(マーシャル)のスピーカーやヘッドホンの話をすると、「これに合うのはどんな音楽?」と聞かれることがあります。
ギターアンプのMarshallで言えば、その独特な歪んだ音質で、それこそハードロックやブルースなどの相性はその歴史が物語るほどバッチリなのですが、スピーカーやヘッドホンに関してはアンプとは違う繊細な音作りになっているので、結構ジャンルを問わず楽しむことが出来るのが正直な話。
ただ、やはりMarshallのエンジニア達がチューニングしていることもあり、生楽器、特にギターやベース、ドラムの音がパワフルかつ生々しく聴こえるのはギターアンプブランドとしての誇りと、マーシャル創始者のジムはもともとがドラマーだったということもどこか影響しているのでしょうか。
ここでMarshallスピーカーで聴くべき音楽を紹介しようとした時には、やはりアンプとしてのMarshallと深い関わりを持つアーティストを挙げてしまいます。
第1回目はThe Who(ザ・フー)を紹介します。
ザ・フーがなぜMarshallと深い関わりを持つかと言うと、今でこそ壁のようにマーシャルを積み重ねて使う「マーシャルの壁」の基礎を作ったようなアーティストであるということ。ギタリストのピート・タウンゼントはそれまでの出力50Wの(今で言えば小ぶりだった)当時のギターアンプを指差し、ジムに「こいつの2倍うるさいのが欲しい!」とオファーしたそうです。
時代は1965年頃の話で、ビートルス、ローリング・ストーンズが世界的にスターバンドとなり、ブリティッシュ・インヴェイションと呼ばれるイギリスのロックバンド達が世界中を席巻している時期です。
ジムはそれをなんとか具現化して100Wのギターアンプを制作。しかしピートはさらに同時に、それまでのアンプサイズの倍以上のサイズのアンプを作ってくれないかと無茶振りをしたそうです。サイズや形状はお互いに試行錯誤して話が収まり、4×12”を2台積み重ねて、8×12”(12インチのスピーカーを8発搭載)という当時では化物級なアンプが誕生することとなります。
「ジムから欲しかったのはある意味、巨大な武器なんだ。そのアンプはオーディエンスを黙らせ、演奏を聴かせることに成功したよ」
-ピート・タウンゼント
下のライブ映像はイギリスのキルバーンという地にあるシアターで行われたザ・フーのライブ映像(1977年)。
The Who - Can't Explain Live Kilburn 1977
The Who - Pinball Wizard live 1977 at Kilburn
Marshallスピーカーでも「Kilburn」というモデルがあるのは、このライブ会場が由来なのか。ここではディープ・パープルなどマーシャルに所縁があるバンドが当時数々伝説的なライブを行ったことで知られます。
ぜひマーシャルのスピーカーで聴きたいサウンドです。
参考文献:
アンプ大図鑑 [マーシャル編] The History of Marshall: The First Fifty Years by Michael Doyle and Nick Bowcott
日本語監修 牛澤滋由紀(Marshall blog:https://www.marshallblog.jp/ )
発行:株式会社スペースシャワーネットワーク
ぶん / Noboru