キャンプの新定番の予感?トランスペアレント初のポータブルスピーカー「Light Speaker」レビュー
スウェーデンのオーディオ ブランド ”TRANSPARENT | トランスペアレント”から 、初のポータブルスピーカー "Light Speaker" が登場。「灯り」をテーマにした小粒なスピーカー は他の照明付きスピーカーと一体何が違うのか?その実力を徹底解剖。
最近は機能的なポータブルスピーカーが増えたように思いますが、中でも防水機能や頑丈な筐体といったアウトドアシーンでのハードな使用を想定した製品をよく見かけます。
ただ、防水などの機能ばかりが目立って、オーディオ本来の音質を犠牲にしている製品にガッカリするのも事実。
私の場合エクストリームな場所にも行かないし、万が一の時はジップロックがあれば十分。その代わりできるだけいい音で音楽を聴きたいです。
そんなモヤモヤを抱いていたところ、2021年12月、待ちくたびれたタイミングでスウェーデンからサンタが贈り物を届けてくれました。
調和する4つのエレメント
そのお届けものは、TRANSPARENT | トランスペアレントの「LightSpeaker |ライトスピーカー」。何の捻りもないネーミングですね。ただ言い切っただけのことはあるなというのが率直な感想です。
では、なぜそう感じるのか?
このライトスピーカー、実は「デザイン」「音質」「持続可能性」とこれまでのトランスペアレントのコンセプトを踏襲しつつ、新たに「灯り」を加えた4つのエレメントで構成されていて、その灯りに注いだ熱量の凄さが商品からヒシヒシと伝わってくるからなんです。
この4つのエレメント製品のアイデンティティーとなっているので説得力を感じます。
では、その4つのエレメントに沿って見ていきましょう。
サウンドに鼓動する「灯り」
まずは「灯り」について。
照明の付いたスピーカーは幾つかありますが、このLight Speakerの照明は単なる光ではなく「灯り」というところがみそなんです。
しかも、炎のような揺らぎの灯り。
一度でもキャンプで焚火をすれば分かりますが、あの焚火の炎ってなんなんでしょう。15分のYouTubeを見るのも先送りするようなせっかちな私でさえ、気がつけば 1〜2時間平気で炎を眺めていられるというカルトな魔力。
このライトスピーカーの灯りもそんな魔力を感じつつ、低音の振動とLEDがシンクロされていて、まるで生き物のような揺らぎに自然と見入ってしまいます。
その灯りの秘密は、炎の明るさと揺らぎの関係性を独自に分析し、本体下部に内蔵されたパッシブラジエーターの振動を応用して、LEDで炎のような揺らぎを演出したもの。さらに灯りの反射にもこだわっていて、ガソリンやオイルランタンのホヤ(ガラス)と同じホウケイ酸ガラスを使用する徹底ぶり。だから、キャンプやアウトドアでも試してみましたが、雰囲気のあるアンビエントライトとして活躍してくれました。気になる連続使用時間は10時間ですが、これは音楽再生が前提なので、LEDの灯りだけの利用ならもっとイケそう。
但し、防水ではないので雨の中ずっと外に出したまま使用することはできません。
スペック的にはIPX2だから防塵防滴程度ということですね。
まあ、値段的にもモノとしても水にじゃぶじゃぶ濡らしたいとは思いませんが.....
伝統を咀嚼したオーセンティック「デザイン」
軽量・コンパクト・耐久性という呪縛の中では、どうしても据置型スピーカーに比べて制約が多く、デザインや音質が犠牲になってしまいがちなポータブルスピーカー。
ライトスピーカーは、トランスペアレント初のポータブルスピーカーでありながら、他のトランスペアレント製品同様決して音質を妥協せず、デザインも環境に溶け込む洗練さと上品さを兼ね備えた仕上げになっています。
実はこのライトスピーカーの構想は3年以上前からあって、2019年の夏に初めてモックを見せてもらった時は確か取手が竹でしたね。
日本古来の竹細工の行燈だったり、イサムノグチのAKARIだったり、スウェーデンのビンテージランタンだったり、岩手の南部鉄瓶だったりと、デザイナーのパーさんは、オーセンティックなモノからインスパイアされることが多いんだとか。
どうりでライトスピーカーがどことなく和の匂いを感じるのも腑に落ちました。
そんな少なからず日本文化から影響を受けているプロダクトだけど、スウェディッシュな感性で咀嚼しつつグローバルな視点で創っているから、プロダクトに物語としての神秘さを感じるんですね。
さらにこのサイズ感が絶妙で、片手で持ち運んだり、ランタンとして吊り下げるにも丁度いい大きさなんです。だから、置く場所に気を使うことなくとても使いやすいと感じました。
このライトスピーカーのフォルムの完成度の高さは、10.5cmΦ x 16cmというサイズからくるところが大きいのかもしれません。
Bluettoth機能のない旧車のJEEPには、車内外兼用でこんな使い方もできます。他にも工夫をすればもっといろんな使い方ができると思います。
これほど汎用性の高いライトスピーカーは、小粒だけどトランスペアレント製品の中で最も使い勝手が良く、どれにも負けないインパクトの持ち主だと言えます。
限りなく透明に近い中高音域「サウンド」
さて気になる音質ですが、室内で再生してみたところ、トップに上向きに装着された2.5インチのフルレンジドライバ ーから、定位性に優れたクリアな透明感のある中音域の粒が部屋全体に響き渡り、フルレンジドライバーの割には、伸びのある高音域がきれいに再生されていました。
ただ高域が、ボリュームに対し若干強めに反応するように感じますが、聴く楽曲によっては全く感じなかったりもします。高音域は指向性が高いので、天井の高さにも影響するかもしれません。因みにリスニングポジションは、天井まで1.8mくらいです。
さらにスピーカー下部にひっそりと内蔵された3インチ・パッシブラジエーターによって、地面を這うような重厚な低音が響き、臨場感あふれるサウンドを堪能できるバランスの取れたスピーカーだと思います。
そういった意味では、この手の小型のポータブルスピーカーとしてありがちな中高音域の詰まりを低音の増幅で誤魔化すようなことをしない、オーディオらしいチューニングに好感が持てます。
参考にこのスピーカーを鳴らした部屋に訪れる友人は、一同にどこから鳴っているの?って聞くほどその立体的なサウンドに驚いていますね。
せっかくのランタン型スピーカーなので、ソロキャンプで試してみました。
私のようなできるだけ荷物を少なくしたい者にとっては、コンパクトなのでかさばらないのが嬉しいです。
Sigarettes After Sex の「K」を誰もいない真冬の野原で聞いてみたらサイコーにハマりましたね。中性的な低めのボーカルと澄んだギターのアルペジオに、どこまでも響くベースとドラムの低音を見事に再現しつつ、優しく柔らかさを感じるサウンドは、まるで上質なカシミアのブランケットで優しく包まれたようにまったりとさせてくれるんです。
薄暗く雑音のない自然の中にロマンチックが伝わっていく感じに浸れて、ウィスキーが滲みる感じです。でも私、お酒飲めませんのでコーヒーでそんな気分を味わっています。笑
私がスピーカーに音質を求める理由はここなんです。
「良い音で音楽を聴くこと。」
それは、その時間を最高にリッチで特別な時間に変えるということ。
美味しい食事をしたり、素晴らしい絵画を見たり、感動的な舞台やライブを観るのと同じで、良い音で音楽を聴くという些細なことで日常を非日常に演出できて幸せな気持ちになれる。この魔法の装置が良い音を鳴らすスピーカーというわけです。
直感的な操作性
このライトスピーカーの操作性はいたって簡単シンプル。
ボリュームと灯りの調光ノブに、Bluetoothペアリングボタンがひとつという非常にシンプルな構成のため、マニュアルがなくても直感的に誰でも使用することができます。
万が一わからないことがあっても底面に簡単な手順が記載されているので、わざわざマニュアルを探すことなく確認できるのが、とっても親切で嬉しいサポートです。
いつまでもそばに居てくれる「持続可能」なスピーカー
最近ではオーガニックや再生素材にフェアトレードなど、環境への負担を減らす商品が増えていますが、ことテック系メーカーに関して言えば、再生プラスチック素材を使用したり梱包材を再生紙に変更するなど、できる事が限られていました。なぜなら、プロダクトの中でも最も進化の早い家電は、機能を優先した設計思想でモノ作りをしているからです。
そんな中、トランスペアレントは本気でサスティナブルに向き合うために創設された業界初のサスティナブル・オーディオブランドとして、今世界中から注目を浴びているルーキーブランドです。
彼らは全ての製品パーツをモジュール化し、カスタマーが簡単にパーツを交換できるようにすることで、修理はもちろんBluetoothチップやWi-fiチップなども最新バージョンにアップデートすることが可能となりました。そのためバージョンが古くなったり壊れたからといって廃棄する必要がありません。さらに、カスタマーがどうしても廃棄や手放す場合には、それらの製品を回収し、再利用することまで想定していて、そのためには近い将来生産工場をスウェーデンに移し、自分たちで完全に製品管理をしていくのだとか。
このサーキュレーション型のプロダクトは、単にサスティナブルということで注目を浴びるのではなく、それ以上にデザインや音質の素晴らしいオーディオ製品として唯一無二の存在感を放っていて、サスティナブルに関しては、他のブランドが簡単には真似できないような凄いことをやっているのに、「そんなこと当たり前でしょ」っていう脱力感がかっこいいんですよね。
灯りにくべる音
こうしてこのライトスピーカーを見てきましたがどうですか?
小型ポータブルスピーカーと言えど、音質やデザインを決して妥協しないHI-FIオーディオブランドとしてのプライドを感じました。
最近は、アウトドアとインドアの概念が曖昧になって、アウトドアではよりラグジュアリーに、インドアではよりアウトドアっぽくネイチャーへとシフトしています。
そのため、インテリア雑貨などをアウトドアショップで購入したり、アウトドアで使うギアをインテリアショップで購入するなど、ちょっとした捻りで極力人と被らないようなモノを求める意識が高まっています。
アウトドアやインドアどちらにも使えて、アンビエントライトの暖かい雰囲気と高音質でクールなサウンドを併せ持つライトスピーカーは、正にそういった意識の高い人々のハートをがっちり掴んでくれるアイテムになると思います。
焚き火の火を絶やさないために薪をくべるように、アンビエントな灯りを楽しむために音をくべるスピーカー。
そんな古代から続く炎へのロマンを現代の技術で蘇らせたライトスピーカー。
さあ、今度の週末はどこに行こうか!?
【Information】
カラー:ブラック
素 材:アルミ製
ブランド:TRANSPARENT |トランスペアレント
寸 法:直径105 x H160 mm
重 量:0.6 kg
周波数帯域:60Hz ~ 18KHz
フル充電時間:3時間
連続再生時間:10時間
ぶん / Noboru