オトとヒト「LA BOITE CONCEPTがつないでくれた父から譲り受けたVinylメモリー」LA BOITE CONCEPT×ミュージシャン / ラジオ DJ 光永亮太
シカゴで過ごした幼少期から続くレコードライフへの憧れ

NAVYS JOURNAL「オトとヒト」。今回登場するのは、幼少期をシカゴで過ごし、父の影響で音楽とともに人生を歩んできたシンガーソングライター光永亮太さん。父から受け継いだ思い出のレコードとともに、リビングに響くLA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEの音色。その“ビジュアルとオト”が織りなす心温まる朝。かつて父が自分にしてくれたように、今度は自分が娘たちにしてあげたいと語ることとは……
幼少期をアメリカのシカゴで過ごした80年代。父がリビングでかける大音量の音楽を聴きながら目覚めるのが週末の慣例だった。コーヒーの香りが漂うリビングでは、THE BEATLES、Elvis Presley、Boz Scaggs、Stevie Wonder、Gilbert O’ Sullivanなどの音楽が常に鳴っていた。もちろん、父自慢のレコードプレイヤーで。その音楽に誘われるかのように、目をこすりながら部屋からリビングへと向かって1日を始めるのが無性に好きだった。
80年代後半にもなるとCDの台頭で、それがCDプレイヤーに置き換わってしまい、一抹の寂しさを感じたのを今でも覚えている。ハイファイなサウンドにはある種の衝撃を受けたが、Vinylが持つあたたかさがリビングから消え、使い慣れた木製の箪笥が我が家からなくなってしまったような喪失感を覚えた。
90年代に高校生になり、再び訪れたVinylブーム。渋谷の宇田川町のレコードショップに足繁く通い、当時ハマっていたR&BのVinylを買い漁ったものだ。しかしながら当時は高校生。高品質なレコードプレイヤーなど買えるはずもなく、アルバイトをして貯めたお金で買った数万円のレコードプレイヤーでそれらを聴いていた頃を昨日のことのように思い出す。しかしながらこのブームも自分の中では長くは続かなかった。というのも、それから数年後、僕はシンガーソングライターとしてデビューすることになる。レコーディング現場で録音したものをダビングして持って帰るものも大体がDATかMD、そしてCD-R。いつしかレコードライフは自分から疎遠なものになってしまった。
「いつかまたレコードライフを再開させたい」。そう思ったのは数年前、実家を建て替えるタイミングだった。建て替えに向けて納戸を整理していると、出てきたのは父のレコードコレクション。ダンボールこそ埃はかぶっていたが、几帳面な父らしく綺麗に整頓された状態で収納されていて、保存状態は完璧だった。その数100枚ちょっと、というところだろうか。
改めて父のレコードコレクションを眺めながら胸が高鳴った。ミュージシャンとしての今の僕を形成している音楽の数々が、CDではなく、実に魅力的なアートワークとともにVinylとして残っている。これらをどうにかして聴きたい。そう思うようになったからだ。
少し話は逸れるが、父とはあまり会話を交わさない。元々父が寡黙な人だということもあるが、男同士の親子は多くの場合、このパターンに当てはまるであろう。昔から父がミックスしてくれたカセットテープや、貸してくれるCDにメッセージが詰まっているような気がして、それらが父の心を垣間見て、想いを通わす会話のツールだった。それを聴いた感想をシェアする時間だけ、お互い饒舌になるから不思議だ。音楽は僕ら親子の潤滑剤だったのだ。
いつしか僕も2児の父になった。大人となった今、父が集めたレコードを通して僕に何を伝えたかったのだろう。好奇心が蠢いた。どうしても父から譲り受けたレコードを聴きたい。
しかしここで困ってしまう。新居が出来上がり、レコードプレイヤーを探してみたものの、部屋に合うような理想的なレコードプレイヤーに出会えないのだ。置く場所はどうするのか、音が良かったとしてもこだわり抜いたインテリアから無機質に飛び出してしまわないか。結局、悩んだまま6年という月日が経ってしまった。
LA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEが我が家にやってきた!

今年の5月、運命の出会いを果たすことになる。大阪で毎年行われる「サウンドメッセ」。昨年もご一緒した株式会社NAVYSの松野さんと前日に楽しく酌み交わしながら、レコードプレイヤーの悩みについて思い切って切り出してみたのだ。レコードライフを再開したいのだが、理想的なプレイヤーに出会えない、と。我が家にはCDを高音質で聴くためのアンプもスピーカーもあるのだが、肝心の四角いプレイヤーの置き場所がない。どうしたものか。そしてこだわり抜いた自宅のリビングの写真を松野さんにお見せしたところ、勧めてくださったのがLA BOITE CONCEPTのLX TURNTABLE。まさに僕が数年間探し求めていた理想のものだった。電流が走った。

見た目は一見「ウッドをベースとした洗練されたお洒落なテーブル」。その上にターンテーブルが乗っている。ターンテーブルとスピーカーが一体化されていて、まさにターンテーブルと家具のいいとこ取り。異彩な存在感を放つこのLA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEは、それ単体で目をひく美しいデザイン。ありがたいことにこれをモニターさせていただけることになった。
数日後、二つの大きな段ボールでLA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEが我が家に届いた。初夏の暑さの中で組み立てには少々手こずったが、1時間半ほどで組み立てることができた。リビングで「ここしかない!」と決めていた場所にLA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEを置く。完璧だ。なんて美しく優雅なのだろう。一気に心が沸点に達した。

さて、肝心なのは音だ。ミュージシャンとして長年活動しているので、耳には自信がある。そして毎週3日、オーディオ環境が整ったラジオ局のスタジオの大きなスピーカーで良質な音も浴びている。
最初に針を落としたのは父から譲り受けたStevie Wonderの「Talking Book」。1972年にリリースされた名盤中の名盤だ。その最初に針を落とす役割を父にお願いした。実に嬉しそうだった。プチプチとした針と音。なんとも懐かしい。懐かしさに浸る間もなく流れてきたのは名盤「Talking Book」のSide 1の1曲目に刻まれているStevie Wonderの「You Are the Sunshine of My Life」。絶妙にトレモロがかったエレクトリックピアノと控えめなハイハットの音。そして実に愉しそうなコンガの音色とベース。Backing Vocal、そしてこれから全盛期を迎えることになるStevie Wonderの伸びやかな歌声。それらが実に立体的にリビング全体を漂うかのように広がっていく。
「これだ!!」
幼少期のアメリカ・シカゴでの音楽体験の記憶を手繰り寄せる間もなく、細胞が喜び始めた。これが僕の音楽の原体験なのだ。
「お洒落でいて音がいい」ではなく「音がいいのにお洒落」

話をStevie Wonderの「Talking Book」に戻そう。驚いたのはその音の解像度。Vinylならではの丸みとあたたかさが備わっているのはもちろん、まるでStevie Wonderとバンドメンバーが目の前で演奏しているかのような臨場感にあっという間に包まれた。それがリビングの天井まで這って行き、そしてまた床へと戻ってくる。これは本当に一体型なのか、と疑いたくなるような粒立ちと空間の広がり。LA BOITE CONCEPTの80年にわたる伝統と技術は並大抵ではないことを思い知らされた。それでいてこのお洒落さ。そう、いつの間にか「お洒落でいて音がいい」ではなく、「音がいいのにお洒落」という位置付けに入れ替わってしまっていたのだ。恐るべし、LA BOITE CONCEPT LX TURNTABLE。
それからというもの、毎夜LA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEの目の前に座り、ウィスキーを傾けながらレコードで音楽を楽しんでいる。父親と心の中で会話しながら。
個人的な萌えポイントはターンテーブルの「ゴムベルト」。アナログマシーンのリールのような役割を担っていて、眺めているだけでなんとも癒される。視覚的な癒しもレコードライフを楽しむ大事な側面のひとつだろう。
LA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEのおかげで再び走り出したレコード生活。今ではレコード店に足を運ぶのが何よりの楽しみとなっている。かつて学生時代にCDやLPを買い漁った青春の日々が戻ってきたことで、心が信じられないくらい満たされている。 そして日曜日の朝には誰よりも早く起きて、リビングから大音量でレコードを流している。父が僕にそうしてきたように、今度は僕が娘たちを良質な音楽で出迎える番なのだ。80年間、LA BOITE CONCEPTが世代から世代へとその伝統を受け継いできたように。
ちなみにLA BOITE CONCEPT LX TURNTABLEについているツマミはVolumeとBassだけ。 Trebleはない。むしろTrebleは必要ない。心に音楽が入り込む音量と必要な低音を加えるだけであなたの毎日は幸せで満ち溢れることだろう。
[お話を聞かせてくれたヒト]

光永 亮太 ミュージシャン / ラジオ DJ
1980年生まれ。2002年にインディーズデビュー。2003年 フジテレビ系月9ドラマ「いつもふたりで」主題歌に抜擢。「Always」でメジャーデビュー。同年、日本ゴールドディスク大賞「ニューアーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
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