傷だらけの天使 「都会の洗礼」

あとわずかで平成が終わる2019326日、ショーケンが亡くなりました。

 

中学のとき夕方の再放送で「傷だらけの天使」を観て、東京に行って菊池武夫のMENS BIGIを着るんだって固く心に誓った15の春。

それから3年後、下北沢でアパート探しをしていたとき、道端で2人組のスーツ姿のお兄さんが、万年筆とボールペンのセットが売れ残って上司に怒られるから12万円相当を4万円で売ってあげるよって話しかけてきた。

自分が質屋に入れるとまずいけど、君が質屋に持って行けば6万円にはなるはずだから2万円は儲かるよだって。

ちょうどアパートの契約のお金を持っていたたから、買ってそのまま近くの質屋に直行した。

「ああ、それね。最近多いんだよ。ダメだよ簡単にそんな話に引っ掛かっちゃあ」

垢抜けない少年が持ち込んだブツを見て質屋のオヤジがそう言った。

 

待って。俺、やられてる?……

 

人生で初めて他人に騙された瞬間だった。

東京生活初日からいきなり都会の洗礼を受けて目の前が真っ白になった。

普通に考えたら誰だってわかるのにさ、やっぱりこの街にはうまい話が転がってるんだって信じちゃったんだよね。

そのせいで、初めての一人暮らしは小田急線"経堂"の4畳半風呂無しボロアパート。

おまけにトイレまで"共同"だったという。

ショーケンのはずが南こうせつかよ(笑)

と、まぁ東京暮らしはこんな塩っぱい感じでスタート。

 

その後、お約束の◯IIの赤いカードという最強の武器を手に入れ、誰も知らないこの街で11PMのカバーガールみたいなお姉さまとの運命の出会いに備え、誓い通りMEN'S BIGIのスタジャンを買った。

あのクソちゃちいカードが天使からのギフトに見えたよね。

そしてある時、いつものように伊勢丹前の丸井新宿店で服を買って会計カウンターで待ってたら、まさに11PMのカバーガールのような綺麗なお姉さんがカウンター越しに近寄ってきた。

一瞬来たかも、マジかよって胸が高鳴った。

そしてその手には受話器が。出てみると受話器の向こうは800km離れた親父。

すぐに想像がついたよ。10万円を優に超えた洋服のローンにこっぴどく叱られその場でカードも服も没収。

その後、背中に刺繍されたMEN'S BIGIのロゴがクレアラシルの匂いを残して新宿駅の人混みに消えていった。

 

そう、あれは32年前のちょうど今頃だったな。

 

ーショーケンに捧ぐー

 

 

 

ぶん / Noboru